千本健一郎の『「書く力」をつける本』(三笠書房、1998年)は、東京・新宿の朝日カルチャーセンターでの文章教室をまとめたものである。「書く力」を鍛えたいと集まってくるひとびととのやりとりを通じて得られた経験が巧みな語り口で表現されている。著者は、かつて「朝日ジャーナル」で健筆をふるい、副編集長もつとめた。 「はじめに―『書く力』の3原則」、「いい文章を『書く』ためには」、「表現力と言語感覚をみがく」、「文章、その吸引力の秘密」、「『引用の力』、『再現』の魅力」、「『文章の作り方』具体例―<わが声>を届かせる」の全5章、「おわりに―何をどう読ませるか『スパイクからバイラインへ』」からなっている。 自分の文章を正確にむだなく伝えるために必要なこと、これが著者の強調したいことである。著者の教室の新入生のなかには、読み手のことを意識せず、自分の言いたいことだけを書くひとが少なくない(19頁参照)。自分の書いたものにうっとりする、自分の感情を吐露するだけで終わる、自分の体験したことを何もかも書き立てる、論証の道筋を途中で見失うといった文章もよく見られる(同頁参照)。自分の書いたものが他人の厳しい目にさらされることを忘れて、ひとりよがりの文章を書くからである。そこで、著者は・・・[全文を読む]
◇続・18歳の読書論―図書館長からのメッセージ 晃洋書房, 2014年8月発行
◇新・18歳の読書論―図書館長からのメッセージ 晃洋書房, 2016年2月発行
◇19歳の読書論―図書館長からのメッセージ 晃洋書房, 2018年2月発行
◇20歳の読書論―図書館長からのメッセージ 晃洋書房, 2020年4月発行
◇大学1年生の読書論 ―図書館長からのメッセージ 晃洋書房, 2022年2月発行
いろいろなジャンルの読み応えのある本を紹介していきますので、少しでも気になる本が見つかったら、ぜひ読んでみてください。 また、みなさんからのおすすめの本の情報もお待ちしています。
【2020年6月】 コロナから見る世界―共存と侵略をめぐる問い―